屋敷を出て、憐とは別行動になった。
俺はルナーを連れて、商店街へやってきた。
何か手掛かりになるかも知れない。
「ここ来た事ある…。」
「あれ、ここに来た事あるのか?」
「ここ…さっき話してた商店街だ!」
「ええ!?そうだったのか??」
「うん。懐かしい…。」
「まさか、ここの話だったとは…。」
「えへへ。そんなに驚く?」
「いや…近所でそんな事件が起こってるなんて思ってなかったから。」
「そっか…。だよね。」
「良かったな。うち来て。」
「……うん。良かった。」
「なんだよ。もっと嬉しそうにしろよな。」
「んー。うん。そうだよね!」
「そういえば、憐の言ってた…さいしゅ?ってなに?」
「ああ、魔術の痕跡採集な。」
「そうそれ!」
「えーと、魔術の何たるかについては今度、憐に説明してもらうとして、今日やる事をざっくりと話すぞ。」
「魔術って私を治してくれた時の?」
「そうだ。魔術には治癒の他にいくつも種類がある。全ては魔力というものを燃料にして起こせる奇跡みたいなものなんだよ。奇跡だって言うと憐はいつも違うって怒るんだけどな。体内の魔力は大気中に放出されて、一瞬で現象に変わる。その現象は術者の意思に基づいて発現するんだ。これが魔術。んで、放出した魔力は全てが変換される事はなく、一部は大気中に取り残されてしまうらしい。その量は術者によって異なる。今日はその取り残された魔力というものを回収しに来たんだ。」
「ふーん?難しいね。でも、それになんの意味があるの?」
「ああ、2つ意味があるらしい。まず、回収した魔力は再利用できる。他の魔術に使えるんだ。それと街の異常を把握できる。魔術の痕跡は術者を物語る。採集できる魔力量が異常ならこの街に危険に晒されている可能性が高いって事なんだ。」
「じゃあ、重要な事なんだ!どうやって集めるの。」
「そうらしい。これを使うんだ。」
「何これ?綺麗な石。」
「特殊な宝石らしい。これは憐が使いやすく細工したもので。魔石って言うんだ。まあ、とにかくこれを痕跡にかざすと魔力が溜まっていく。」
「おお、すごい…。」
1時間ほど歩いて、適当な所で切り上げて帰る事にした。