「本当にあったとはね。」
倉庫下には本当に地下室があった。
窓が無い事以外は普通の部屋だ。
人間1人だったら、暮らせそうな広さと家具が揃っている。
クリーム色の明るい壁紙。少し変わった形の照明スタンド。風呂。トイレ。木製の机と椅子。中央の赤いソファ。その前にはテレビが置いてある。
「なんだここ。隠れ家みたいなとこだな。」
尤は一通り見渡してから、呟く。
「実際、そうだったのよ。」
「え?」
「これ見て。」
憐から写真立てを渡される。
「これは…。」
そこには無邪気に笑うルナーと見覚えのある男性が写っている。
「予想が当たってる。ルナーはしばらくここで暮らしていた。」
「ルナー…。」
「そう考えて良いと思う。ルナーは拾ってくれたドクターに感謝をしている。でも、ドクターは変わってしまったと言ってたし、怯えてた。きっと、ルナーがここに来てから、武藤に何かあったんじゃないかな。」
「何かって?」
「分からない…。ルナーが関係しているのか。それとも他の要因か。」
「暴力を振るいたくなるような理由が?」
「んー…。ルナーの言う通り、単純に武藤がおかしくなってしまったのかもね。」
「武藤が変わった理由か…。」
「ここで考えていても仕方ないよ。先を急ぎましょう。本棟にはきっと何かある。」