「ひとまず、調査と鍛錬。この2つの課題がクリアできた。調査の結果を伝えるわね。」
「頼む。ところで、情報ってどっから仕入れたんだ?」
「あー、とある情報通からちょっとね。」
「情報通…?」
「探偵みたいなもんよ。ほんとは行きたくないけど、必要だから仕方なくね。」
「行きたくない…?」
「あ、うん。ははは。」
「へえ。」
どうして行きたくないんだろうか。
「んじゃ、調べた情報を教えとこうかな。」
「おう。頼む。」
「まずこれを見て。武藤製薬敷地内の地図。」
そう言うと、憐が冊子を渡してくる。表紙には武藤製薬設計資料と書かれている。
「その前の方に設計図が載ってるから、あとで目を通しておいて。」
「分かった。」
「私の見立てでは、本棟の地下が怪しいと思ってる。」
「まずはそこを目指すつもりで。何もなかったらもうしらみ潰しかな。」
「おう。」
「それから、武藤製薬周辺の情報なんだけど。少しだけ、気になったのが社長の噂ね。」
「噂?」
「うん。ここ最近で人が変わったとか、以前はとても優しい人だったって声があるみたい。なんでも、半年前に娘さんを亡くしたらしくて、その影響なんじゃないかって。」
「へえ。それって別におかしい事じゃないだろ。」
「んー、でもね。社内の人間が口を揃えて言ってるんだ。あの人はおかしくなっちゃったって。」
「おかしくなった…。」
「うん。社内の人、それも社長をそんな表現するなんてよっぽどじゃない?しかも、みんな揃って。だから、気になったのよね。」
「確かに、引っかかるな。」
「でしょ?それから、魔術の研究らしい事もやっていたみたい。」
「それこそ何がおかしいんだ?武藤は魔術師の家系だって言ってただろ。」
「別に問題はないよ。けど、それまで薬学のみに絞って2世代ほど経つ武藤家が再度魔術の研究なんて不思議じゃない?」
「まあ、そうか。」
「ルナーを軸にして、物事が進んでいる気がして怖い。」
「……。」
「こんな感じね。不確定なモノも多いけど、最低限の情報は集まったかな。」
「だな…。あとは建物内がどうなっているのかは実物を見てみないと。」
「うん。それじゃ、この後についてだけど。」
「やっと…やっと助けに行ける。」
「そうね…。」
「目標は武藤製薬に潜入し、ルナーの居場所を探る事。そして、できる限り、穏便にルナーを救出する。」
「………。」
「作戦というにはお粗末ね…。だけど、意識はしておいて。ルナーを助ける。それだけ達成できればいい。」
「わかった。」
「12時に作戦開始。おっけー?」
「ああ。」